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第51回 ミサゴ

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  ミサゴという名前のタカがいます。
  英名はザックなどで有名なかのアウトドアメーカー osprey です。
  白と黒を基調とした、とてもシックなデザインの猛禽類です。
  ワシやタカなどの猛禽といえば、他の鳥や動物を襲って食べるとの印象が
  一般的には強いのでは? と思います。
  ところが、このタカはちょっと変わっていて、主に魚を捕食しています。
  ミサゴは、魚食性の猛禽類なのです。
  ゆえに、すみかは海岸や大きな河川で、時おり内陸の湖沼やダムなどにも
  姿を見せるといった具合です。


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  子供の頃、まだ見たことのなかったこの鳥に、ずいぶん憧れを募らせました。
  鮮やかな色彩の鳥も魅力的でしたが、どうしてか、白と黒のデザインの鳥に
  より強く魅かれたのです。ヤマセミ、カササギ、セグロセキレイ、サンショクイ、
  そういった、いわばモノクロ(?)な鳥たちに、ことさら魅了されておりました。
  単に「カッコいい」という、それだけのこと。キレイでカワイイ鳥も◎ですが、
  ブラック&ホワイトの落ち着いた色あいに、心をくすぐられていたのでしょう。
  なかでもミサゴは、そのダンディさにおいて、群を抜いていました。
  写真集でその典雅な姿を眺めては、出逢える日を楽しみにしていました。
  しかし不安もありました。ミサゴは激減している鳥であるというようなことが、
  おおむね、どの本にも書かれていたからです。
  海や湖に縁のない土地に育った私には、ミサゴは遠い鳥だったのです。


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  初めての出逢いは、北海道の海辺でした。想像以上の美しさでした。
  このタカが実はそんなに珍しくもなく、ことさら希少というわけでもない、
  割とフツウの猛禽類であることも、その後、だんだんとわかってきました。
  ですが「特別な鳥」でなくなったいまでも、やっぱりミサゴのダンディさには
  つい見惚れてしまいます。りりしい、という言葉が、これほど似合う鳥も、
  そうはいないのではないでしょうか。

  彼らをよく見かけるのはやはり海沿いです。たまに丘陵地などで目にしても、
  実のところは海からさほど離れてもいない場所ということが多いのですが、
  深い山あいの湖やダム湖で繁殖している個体も、それなりにいるようです。
  それは、その水域の魚の資源量にも大きく関連してくることなのでしょうが、
  山地でミサゴの姿を目にすると、またちょっと違った印象を与えられます。

  さて、山の中の湖といえば、こちら十和田湖もまたその例に洩れません。
  そしてミサゴは、十和田湖の上空にも、時どき姿を見せてくれます。
  常に目するわけではないので、居つきの個体というわけではなさそうです。
  が、単に通過や流れ者というのとは、またちょっと異なるような気もします。
  ピョッピョッピョッピョッ、と鳴きながら、御倉山のあたりを旋回しています。
  大きなコイを狙っているのでしょうか。それとも、ヒメマスなのでしょうか。
  切り立った断崖をバックに、ことのほか優雅に湖上を舞う白いタカを、
  もしカヌーの上から観察などできれば、それは最高の経験だと思います。


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  先だっては、蔦沼のほとりに現れたミサゴを目にする機会がありました。
  時おり激しく発声し、ブナの枝から枝へ移りながら、魚を狙っていました。
  空中へ飛び上がり、ホバリング(停止飛行)、その後、水中へダイビング。
  再び空へと舞い上がった際、その脚にしっかりと捕まえられていたのは、
  ずいぶん立派なサイズの、おそらくはコイと思しきものでした。
  ミサゴという名のいわれは「水探(さぐ)り」にあるといわれます。
  まさに、水中の魚を探る鳥、であります。

  何年か前、奥入瀬渓流のほとりでも、ミサゴに出逢ったことがあります。
  こちらは、どういうわけか遊歩道の上に「落ちて」いたものでした。
  なんでこんなところに! と、少なからず驚きました。何が原因だったのか
  わかりませんが、しかし目の光は衰えておらず、元気はありそうでした。
  若い個体で、何かのアクシデントでたまたま落ちてしまったのではないか、
  そう思われました。通りかかった観光客の方が、心配して与えたのでしょう、
  その足下にはパンが置いてありました。さすがに口にした様子はありません。
  写真を一枚頂こうと、腰を屈めて、少し近寄ってみました。
  とたん、ツンと鼻をつく魚臭を感じました。
  なるほど、やっぱりミサゴは魚食専門の猛禽なのだなあ。
  改めてそう感心させられたものでした。

(写真・文/河井大輔)