web ネイチャーランブリング 第1回【樹根】

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第1回 【樹根】

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  森に聳(そび)える巨樹にしばしば圧倒されてしまうのは、
  仰ぎ見るその高さと、抱えきれぬほどの幹まわり、
  そして威風堂々とした、
  その枝ぶりによるところが大きいと思います。

  しかし、時にそれら以上に目を引かれてしまうのが、
  ゴツゴツと無骨に地上へと隆起した、
  野太い樹の根の張りようではないでしょうか。
  大地を鷲づかむ巨大な掌のようでもあり、
  見ようによっては、
  何匹ものオロチのごとき蛇体が
  ほしいまま地面にのたうっているようでもあります。

  樹根の広がりについて、
  私たちはふだんあまり目にすることも、
  特に気にかけることもありません。
  ですが幹や枝葉と共に、
  もちろん樹の重要なパーツとなっています。
  地中にあって樹体を支持する「錨」であり、
  水分と、そこに溶けた養分を吸収する
  「血管」でもあります。

  硬く、いかにも重厚そうな樹の根が、
  見つめていると、
  やがてどくどくと脈打つようにも思えてくるのは、
  ゆえにあながち的外れな想像でもないかも知れません。

  樹の形を見ると、幹から太枝へ、
  そこからさらに細い枝へと分かれていくように、
  地中の根もまたいくつにも枝分かれして広がっています。

  まるで怪物の触手のように地上を覆う根の群れは、
  幹の根元から地中直下へと、
  突き刺さるように伸びて全体を支えている
  「主根」からすぐに分岐し、地面と平行に伸びていく
  「側根」(あるいは「平根」)が露出したものです。

  樹根の面積は、
  一般に、その枝ぶりと同じ程度といわれていますが、
  ハルニレやヤマグワなどは、
  はるかに根の広がりの方が大きいといわれます。
  樹の種類によって、根のあり方もまたさまざまなのです。
  根の、地中への潜り方にも違いがあります。

  ここ八甲田山麓でおなじみのブナは
  あまり根を深く張らない「浅根性」ですが、
  カツラ、トチノキ、ミズナラ、アオモリトドマツなどは、
  深く根を張る「深根性」の樹とされています。

  カツラやトチノキは、奥入瀬の渓畔林として知られる面々。
  渓流沿いという、川の流れによる「撹乱(かくらん)」の
  おそれが常にある環境では、やはり根を浅く張っていては
  大きく生育することができないためだろうな、と
  なんとなく、すぐに納得がいくような気もするのですが、
  ミズナラはブナと同じような、比較的安定した環境に
  生育する樹木として知られます。
  では、この違いはなにゆえのことなのでしょうか?


  大きな樹の居並ぶ森の散策では、
  私たちのまなざしはしばしば見上げがちとなっています。
  時に、こうした視点で樹々の足もとを眺めてみるのも
  面白いのではないかと思います。

  森の天井をささえる巨人アトラスたちの
  無言の「踏ん張り」を意識する時、
  それまでの森とは、また違った印象が生まれるかも知れません。

(写真・文/河井大輔)