さてさて、あばら家荘で「ラット音」に悩まされつつ、頭に思い浮かべていたのは
子供の頃に見た、超オソロシイ映画『ウイラード』(1971年)でありました。

もちろんホラー映画です。パニック映画です。実写版のネズミの恐怖映画!
母親が大のホラー好きでしたので、ワタクシも、どうもその血を引いているよう。
母親は大のネズミ嫌いのクセに、こわいものみたさで、わざわざこんなのを見ては
きゃーきゃー騒いでました。騒ぐくらいなら最初から見なきゃいいのに、と思いつつ、
つられてツイ見てしまう自分がこわい。見なきゃよかったと毎度後悔するンですが。
『ウィラード』とは、ネズミの名前ではなくて、気の弱い陰気な青年主人公の名です。
友人がなく、屋敷に住むネズミだけがオトモダチという、暗い青春を送っている彼は、
『ソクラテス』と名づけた白いネズミと、『ベン』と名づけた黒いネズミを使って、
父親の会社を乗っ取り、屋敷まで奪おうとする会社の悪党おやぢを血祭りにあげる。
数千数万のネズミが一気に群れをなして、イヤミなおやぢを喰い殺すわけですな。
いやはや、目を覆いたくなるシーンです。めっちゃくちゃに臨場感があったのは、
やはりホンモノのネズミを使って撮影していたからなんでしょうか。
世にはネズミの調教師という職業の方がいらっしゃるそうで、いやはやなんとも。
もちろんお話はそれだけでは済みません。
ウィラードに人間の恋人ができてしまうあたりから、だんだん佳境に入っていきます。
いくらクラい主人公でも、そりゃあネズミよりは、だんぜん若い女性の方がいいよね。
(ちなみにこの恋人役がイーストウッドの愛人で有名だった女優のソンドラ・ロック。
ちょっと陰のある、痩身な、いかにも薄倖そうな美人で、ワタクシはとても好きでした)
で、アメリカ人女性は、極度にネズミを忌み嫌いますもので(気持はわかる)、
ウイラードはそれまでの「親友」がジャマになるというわけ。そりゃそうだろうね。
彼女が家に遊びに来たらネズミうようよ・・・じゃあ、まとまるものもまとまらない。
(余談ですが、戦後のワタクシたちが特にネズミを毛嫌いするのは、ある部分
戦後の日本文化が強力にアメリカナイズされてきたことと無関係ではないような?)
美しい恋人ができたことで「ねずみ男」から「青年」に戻ったウィラードは、
決心してネズミたちをなきものにしようとするわけですが、逆襲されてしまってサヨウナラ。
そういう映画。こんなもんヒットするわけねえ、とか思ったヒトいますか。それがしたんですね。
続編が作られました。その主人公は、今度はニンゲンではなく、直球でネズミ。
黒い方の「ベン」が主役。映画のタイトルも、そのものズバリで『ベン』。
『ウイラード』に負けず劣らず無尽のネズミたちがあっちこっちでいいだけ暴れまくり、
いやあ、もう気持悪いの何の(じゃあ見るなよって)。

ただ『ウイラード』がホラーだったのに対して『ベン』の方はヒューマンなストーリー。
心臓病の孤独な少年と、気の荒いネズミとの「心の交流」というのがテーマなんですね。
アメリカ人は、こういうの好きですよね。
イヌやイルカやブタとの交流を作品化したのはありますが、
ただまあネズミといえば、やはりなんといってもこの2作品の右に出るものはない?
映画のテーマ曲を唄ったのは、映画ファンのあいだではすこぶる知られた話ですが、
先般なくなった、かのマイケル・ジャクソン。まだ少年時代でした(37年前です)。
透明感のある美声で、曲もよろし。いい歌ですよね。
アメリカで1位となり、日本でもかなりヒットしたようです。
聴いたことのない人はこちらをどうぞ↓(ネズミ、出てきませんので御安心を)
しかしながらおとぎ話的な『ベン』よりは『ウイラード』の漂わせる救いのないクラさの方に
なんとなく魅かれる人は多かったのではないでしょうか。
ナント、『ウイラード』は2003年にリメイク版が作られます。

主人公を演じるのは、かのクリスピン・グローバーって、いっても誰ソレ?って感じでしょうか。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで情けない父親役をやっていた俳優、といえば、
ああーと思い当たる人も少なくないのでは。リメイク版『ウイラード』では、まさに怪演!
情けなさ・哀れさ・ブキミさが滲み出ております。
リメイク版は、えてしてオリジナルより評判はよろしくないもので、『ウイラード』に関しても
その例に洩れないのでありますが、この俳優の起用だけは正解だったのではないかな。
少なくともホラー映画というカテゴリーのうちだけで『ウイラード』をとらえるのであれば。
(名作『コレクター』のような感じで『ウイラード』を撮るとしたら、もう少し地味な俳優の
方がいいかもしれない、とか、ちょっとだけ思ったりもしたもので)
ちなみに、あばら家荘にはサスガにこれほどのネズミはおりません(当然じゃ)。
なんだかアウトドアにまったくカンケイない話ばかり書き綴ってますが、
来月からは「すべらないスキー」をキーワードに
「奥入瀬 雪の森日誌―プレ・スノーランブリングツアーレポート」が
はじまる予定なので、どうぞ御容赦を!
だぼ
続きを読む "野の花 あばら家荘日誌(その16の2)ウイラード"